変質・劣化・べた付き

■近年、革製品の劣化・変質・べた付きが急増しています。当社は、所有者のすべてから問診して情報を集め、その原因を検証して来ました。
その結果、主な原因(パターン)が、「管理」と「業者」の2つに分かれて判明しています。
「管理」とは所有者の管理上に原因があり、「業者」とは、業者が行なった作業法が原因となっている劣化・変質です。

 
 
この例は、「しばらく使っていなかった」というお客様。高温多湿の日本では、使っていない時こそ、革のチェックが大事です。この製品は、革の表面に、やや厚膜なウレタン系・アクリル系・ブタジェン系のバインダーとプロテインを調合して「ベースコート」を施し、仕上げでは独特の透明感を出すために、水性染料とウレタン樹脂、助剤と感触剤を調合して仕上げています。弱点は、高温多湿です。  
 
 
この革の劣化は、まるで「水飴」が固まったような状態で、すべてがべた付き、くっついて剥がれています。いつもこの例では、当社のスタッフが悲鳴を上げてます。表面の劣化物質を全て除去して、ベースコートから仕上げ直します。もし、革自体が破れ、剥がれていたら復元はできません。このお客様はラッキーです。  
 
 
この革は、上の例とは全く異なる製品です。お客様は是非、正直に答えていただきたい。販売店に持ち込み、べた付いているからとクレームしたそうです。「私は何もしていません」とのことでしたが、表面に防水剤と思われる「溶剤系物質」が付着していました。なんにでも防水、防水というのは困りものです。この革の場合、それが劣化、べた付きの原因です。  
 
革製品の中でも、人気のエナメル製品。これは現在、主流のウレタン樹脂です。エナメルには、アクリルとウレタンがあり、水性と溶剤がありますが、ヨーロッパ製は現在殆ど水性品です。白くカビになっている部分が非常に困難な除去となりましたが、このお客様はラッキーでした。これも、高温多湿が原因です。また、車内や窓際の直射日光は絶対ダメですよ!  
 
高級品のクロコダイル。「過去に、別の業者に依頼して直してもらった」というのですが、この業者は全く素人のようです。信じられないことに、塗料を塗ってました。それが変色して赤くなり、表面が汚く剥がれています。お陰で、この状態を修復するために、困難を強いられました。お客様は、「ベトベトして来たので」と、気付くまで2年も経っているため、その業者に文句が言えなかったと…。  
 
クロコダイルにカビが…。カビは、「革の癌病」です。真皮の内部から発生した場合は完全にアウトです。「手遅れです」と、一度はご回答したのですが、「べた付きが直せたら使いたい」というご希望。表面のすべてを拭き取り、当社のオリジナル手法で仕上げたのですが、「新品のように」とは成りません。しかし、べた付いたりしませんよ!  
 
「数年前にデパートの催事で、革職人が来るというので、汚れた白いメッシュを依頼したら、ギラギラと光り、硬くなって帰って来た。」と言う。デパートにクレームしたら、「使っている内に軟らかくなります」と回答が。その後、黄色く変色して、べた付き始めたというのです。当社が検証して驚きました。デリケートな水性品に、汚れたままラッカー顔料を厚化粧していたのです。不純物をふき取ってみると、革がすべて黄変色して劣化してました。お客様は、ひどくお怒りでした。  
 
これも業者の仕事です。きっと、当時は「うまく塗ったつもり…」なのでしょうが、塗ったものは必ず剥がれます。また、時間が経つと、変色やべた付きを発生するものです。徐々にムラにもなって来ます。その場だけ、「分からなければいい」という考え方なのでしょうか?それにしても、このような例が多いのは、私たちもプロとして許しがたいことです。  
 
昨年の猛暑に、保管していたエナメルの財布が、べた付いて他の物とくっつき、キズのように白くなっていたそうです。検証すると、下地の革に、黒いアクリル樹脂を貼り、ウレタン系エナメルとプロテイン、感触剤と助剤で薄く拭き、磨きを掛けた後に、透明なクリア剤で仕上げた、手の込んだ製品でした。長時間の高温状態で、下地のアクリル樹脂と表面のクリア剤が反応して溶解したのが原因です。